アリゾナ疾走中

2003年10月29日
鯖家は物持ちの良い家庭です。

例えば、鯖の衣類で、3年ものなどは、まだまだ新参者です。この前着ていたカーディガンなどは、鯖が小学校6年生の時に購入したものです。高校の時の靴下もいくつか存命しています。干支も一回りして、ようやく一人前といったところでしょうか。

それどころか、鯖母がOLをやっていた頃の服さえもまだまだ現役です。70年代風どころではなく、本当に70年代の服です。去年の冬は、当時のブーツを鯖妹が愛用していました。

また、鯖の使っているCDラジカセは中学校の入学祝に鯖父が買ってくれたものですし、今でも小学校の図工で買った色鉛筆を(買い足しはしてますが)ヲタ漫画を書くのに使用しています。
100円のシャープペンシルもプラスチックが乾燥により磨耗して物理的に壊れるまで4〜5年は使い倒します。最長記録は小3〜大2の約10年。

当然、家電製品は、鯖父大学生時代の扇風機を筆頭に10年選手がゴロゴロです。最近いくつか耐用年数を大きく超えて買い替えをいたしましたが。

エコロジーと貧乏性紙一重の家庭です。
※鯖さんの性根は貧しいですが。

そんな鯖家の愛車は、ありがちなセダンのサニー君(仮名)です。

鯖家がS台に引っ越してきたと同時に、新車でやって来たサニー君は、明らかにありがちな車でした。
多分、家から一番近いという理由で選ばれたディーラーで、鯖母の「暗いところで一番目立つのは白い車だ」という固定観念で白のオーソドックスなセダンがセレクトされ、鯖父の財布事情により、ほとんどオプションなしで鯖家にやって来たのです。

それから約13年。鯖家とサニー君は共にありました。今ではボロボロです。

鯖や鯖妹の大学入試や成人式の時は、大雪の中、文句も言わず走り、鯖父はゴルフクラブのセットをトランクに入れたまま走り、鯖母はバッテリー液の補充を忘れてバッテリーをあげること数度。そういえば、タイヤもあんまり買い換えてもらってなかった。
ゴリゴリとサイドミラーを擦られることなど日常茶飯事。

そんな苛酷な環境は当然として、鯖と鯖妹という、世界最悪の初心者運転手二人に乗られるという不幸も経験しました。そんな不幸な車は世界に何台あるのか。何の罪科でこんな家庭に来てしまったのかと涙に咽んだ夜もあったことでしょう。

そして、鯖家はどこに行くのもサニー君。

鯖の青春(今もだが)のそこかしこにサニー君はありました。

そんなサニー君ですが、さすがに登録10年を超え、走行距離は(タウンユース中心だったため)さほど多くはないのですが、基本的に手入れに無頓着な家庭に酷使されていたため、ここ数年は不調を訴えることが増えてきました。
去年は、ついに鯖母搭乗中に雪だまりで動けなくなり、付近を歩いていた大学生の集団に救出されるという事態が発生し、両親は買い替えを検討し始めたのです。
※そもそも排気量1300ccのファミリー向けセダンで雪の坂道に挑むのもどうかと思うが。

サニー君を愛し、乗り潰すと宣言していた鯖家でしたが、いよいよサニー君の命の火も燃え尽きようとしているのでした。むしろ、消されようとしているのか。物理的にもそろそろ全面修理か廃車かという選択を迫られる時期でした。

そして鯖父は、実は新しい車が欲しかったらしく、嬉々としてパンフレットを集め、鯖母と検討しておりました。鯖母も、雪だまりにはまった恐怖から、サニー君の、修理と手入れだけではどうにもならないパワー不足(というか老化)を見過ごせないと考え始めたようでした。それももっともですが。

そんな両親を見つつ、それでも健気に我々の送り迎えに黙々と走るサニー君に、鯖の心は痛みました。
※根が貧乏性なので、モノを捨てることに罪悪感を感じるタイプなのです。

サニー君はもう10年以上もこき使われているし、車内で煙草は吸わないように使っていたので内装やエアコンは比較的きれいとはいえ、エンジンやブレーキにはガタが来はじめています。
現に、某ディーラーでの査定は、買い替えの値引き代わりに下取り価格3万円と言われたらしい。

このまま業者に引き渡したら、多分そのままスクラップにされるんだと思う。
特別珍しい車種や型式でもないし、人気のあるオプションがついているわけでもない古いセダンだし。きっと、こんなことを言っている私自身、中古車カタログでこのサニー君のような車を見ても、買おうとは思わないだろう。

でも、サニー君は、もう、家族みたいなもんであって…。今まで、サニー君がいるのが当たり前なんであって…。家に帰ってきたら、そこにサニー君はいたのに。離れるんじゃなくて、いなくなるなんて。
ここ10年以上の鯖家はサニー君なしには語れないのに。

そのサニー君が、バラされて、潰されて、鉄クズみたいにされるのかと思うと、何ともいえない気持ちになります。牽引されて整備工場につれて行かれる姿なんて、まさしく「ドナドナ」の子牛と同じじゃない?あんまりだ、皆、そんなとき、どんな風に自分の気持ちを納得させるのだろう?

…願わくば、サニー君がまた新しい車に生まれ変わりますように。

日本では、もう需要がないかもしれないけど、もっと車の足りない国や地域では、サニー君もまだそのままの姿で動けるのだろうか?そういう生き方もあるよね。もう、ナンバープレート外したら、ただの機械として、外国で生きていってくれないかな。

そう考えると、何故か、真っ赤な土だけの広い大地を横切る直線道路を、土煙を巻き上げながら走っていくサニー君の白い姿が浮かぶ。真っ直ぐ、真っ直ぐに走っていく。

多分あれはアリゾナ?
※イメージだけで話しています(笑)

でも今も、ちょっと整備工場で見てもらったら、サニー君のエンジンオイルのタンクはめちゃくちゃになってて、ちょっと修理が大変な状態らしい。←逆流して真っ黒になってるとか。
多分、このまま、新しい車が(もう契約しちゃったらしいし)鯖家に来るまで騙し騙し使って、そのままサニー君は廃車されてしまうんだろう。仙台○ッサンのおっちゃんにつれて行かれたらそれっきりだろう。

でも、鯖家を去ったサニー君はアリゾナを走っているんだと思いたい。鯖はそう思っている。

今度の休みに、サニー君と記念写真を撮るつもりです。
そう鯖母に言ったところ、「サニー君はお姉ちゃん(←鯖)にそんなに大事に思われて幸せだね」と言われましたが、結局、鯖だってサニー君を自分が引き取って、修理して乗るわけじゃないので、見捨ててしまうことに変りはないのです。自己満足して、自分が楽になりたいだけ。

そう思うと、自分がすごく人でなしのような気がするし、黙っているサニー君が切なくて。
結局捨てる相手に「愛してる」なんて言っても、そんなの何の意味もないような気がして。

ごめんねサニー君、ありがとうサニー君、そればかりが繰り返しぐるぐる回っています。

コメント

鯖

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